「母から譲り受けた着物だけれど、一度も袖を通していない。」
「祖母の帯を箪笥から出すたび、思い出がよみがえり、処分することができない。」
そんなお話を、お客様から数え切れないほど伺ってきました。
着る機会はない。
仕立て直す勇気もない。
だからといって手放すこともできない。
その間で揺れ続けている方は、決して少なくありません。
着物は「布」ではなく、家族の記憶です。
成人式の日、嬉しそうに着物を整えてくれた母。
お正月になると、毎年着物姿で迎えてくれた祖父母。
結婚式や七五三、お花見、お祭り…。
その一枚には、家族が過ごしてきた時間や、その時々の笑顔が織り込まれています。
虫食いがあっても、染みが残っていても、簡単に捨てられないのは、その布に大切な人との思い出が宿っているからではないでしょうか。
蚕玉は、着物を「古い布」とは考えていません。
そこにあるのは、人生の記憶そのものです。
「使える形」で、思い出を暮らしの中へ
「娘は着物を着ないから、この先どうしたらいいのだろう。」
そんな声もよく耳にします。
無理に着物として残すのではなく、毎日の暮らしで使えるバッグや小物として生まれ変われば、大切な思い出は、これからもそばにあり続けます。
使うたびに、その人を思い出す。
家族との会話が生まれる。
それも一つの「受け継ぎ方」ではないでしょうか。
蚕玉が大切にしていること
蚕玉は、着物や帯をリメイクしているだけではありません。
蚕玉が向き合っているのは、一枚の布に刻まれた「家族の記憶」です。
思い出を失うことなく、これからの暮らしの中で使い続けられる形へ。
それは、伝統を受け継ぐというよりも、「大切な人への想いを未来へつなぐこと」だと考えています。
もし、ご自宅の箪笥に「捨てられない一枚」が眠っているなら、その着物には、まだ新しい役割が待っているかもしれません。
蚕玉は、その想いに寄り添いながら、一つひとつ丁寧に、新しい命を吹き込んでいます。

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